こんにちは、元地方公務員で人事・採用を担当していた”ともきち”です。
人事担当の目線から、公務員試験、公務員の人事等について役立つ情報をお届けします。
それなりの規模の自治体の公務員試験では必ずとも言っていいほどある集団討論。
グループディスカッションとかディベートとかいうところもあるらしいですし、それぞれの言葉の正確な意味合いは違うかもしれませんが、試験としてはだいたい同じです。
私も面接官として、いろいろなグループの集団討論を見てきました。
面接官という気楽(?)な立場からすると、集団討論ってけっこう見てて面白いです。
ほんとに個性が出ますからね。
ここでは、どのような基準で採点しているかやNGな行動など、これから集団討論に臨む皆様に少しでも役立つよう、私の経験や知識をお伝えしたいと思います。
◆目次
集団討論とはどんなものか
集団討論やグループディスカッションは、いまどきでは大学のゼミ等でもけっこう取り入れられているので、経験した方も多いのではないでしょうか。
基本的には、就職活動、公務員試験でも基本的なスタイルは一般的な集団討論と変わりません。
- あるテーマについて
- 決められた時間内に
- 数名から10名程度で話し合って
- 結論を導き出す
といったような構成です。
ちなみにディベートだと、明確に賛成と反対の立場に分かれての話し合いとなります。
一般の企業でも同じですが、方針を決めて、サービスを提供していくには”話し合い”が不可欠です。
我々はお猿さんではなく、人間ですからね。
公務員は何か職人技で”ものづくり”をしていくわけではないので、その必要性は特に顕著。
昔だったら殴り合いで決めて、腕力の強い人の意見が通ったかもしれませんが、日本は法治国家です。
話せば分かる、ということで、話してコミュニケーションをとるということは非常に重要な要素になります。
そんな人間としての話し合い、コミュニケーションの能力を見ていくのが、この集団討論の試験。
次からは集団討論試験の実際の流れを見ていきます。
公務員試験における集団討論(グループディスカッション)の流れ
さて、実際の集団討論の流れですが、これは自治体によってまちまちなので、一般的な流れについて記載していきます。
①グループ分け
1次試験(筆記試験)の合格者が後日集められ、集団討論が行われます。
私がいた自治体は受験生の負担を避けるため、通常の面接試験と同日に実施していました。
集団討論を実施し、終わったら面接を行うといった感じです。
集団討論は6名から10名程度のグループが作られるのですが、自分たちで仲良くグループを作って・・・とかではなく、自治体側が指定します。
この際のグループは機械的に決めています。
3グループ(Aグループ、Bグループ、Cグループ)つくるとしたら、筆記試験合格者の受験番号順に
1番はA、2番はB、3番はC、4番はA、5番はB、6番はC・・・以下ループといった感じですね。
(もちろん、必ず上記のような決め方ではなく、くじみたいにランダムで決める場合もありますよ。)
別にAグループに選ばれたら何かあるという訳でもないので、特に気にする必要はありません。
②討論する内容のテーマが示される
そして、討論するテーマについて示されます。
ここでは、流れの②としてご紹介しましたが、このテーマの示されるタイミングについても、自治体によってさまざまあります。
・1次の筆記試験に合格した段階で、事前に合格者に示されている場合
・当日面接会場に行ってみると、そこで発表される場合
・集団討論がはじまる直前に示される場合
いろいろあります。
自分の受験する県や市の試験要綱はしっかりと見ておきましょう。
③集団討論スタート
グループ分けされた後は、グループごと順番に別室に呼ばれていき、集団討論スタートです。
数名の試験監督が前に座り、通常、受験生は「コの字」型に配置されたテーブルに座ります。
試験監督がスタートの合図だけはしますが、受験生たちがどのような行動や発言を見るため、特に具体的な説明はしません。
こんな感じ↓でスタートです。
「こちらからは特に指示はしませんし、途中で口をはさみませんので、20分間で皆さんのお考えを議論してください。」
ちなみに、終わりの合図もないこともあります。
そのあたりの時間管理も含めての試験ということですね。
集団討論のテーマについて
面接官はその集団討論をどう見ているかの前に、受験生にとって重要な集団討論のテーマについて、どのようなお題を出されるかを解説していきます。
これも自治体ごとに違うと言ったらそれまでですが、多いパターンはあります。
それはズバリ、「社会的な問題と絡めて県や市といった自治体を良くしていくにはどうすればいいか」ということです。
当たり前と言えば当たり前のテーマです。
この討論を進めていくには、前提の知識としてその自治体の現状、社会としての問題を知っていないといけないですし、受験生がどの程度本気で受験しているかが簡単に分かりますからね。
このパターンでの具体的なテーマの例は以下のようなものとなります。
- 人口減少が進む中、自治体に移住・定住してもらうにはどのようにしたらよいか
- 子供を産み、育てやすい社会をつくるために自治体に求められる役割は
- 観光客を呼び込むためにどのような施策が必要か
- 自治体で管理する公園で事故が起きた場合の対応はどうすべきか
もちろん、これらのような近年のトレンド、社会問題と自治体の対策に関するテーマ以外のユニークなものもあります。
自治体に関するもの
- ○○市にゆるキャラとキャッチフレーズをつくることとなったので、アイデアを出しなさい
- ○○県に新しい部署をつくるとしたら、何という名称で、何をする部署が必要か
- ○○市を改名することになったが、何という名前でがよいか
- 自治体のSNS活用と注意すべき点とは
社会の問題に関すること
- 働き方改革に必要なこととは
- 企業の人手不足はどのように解消すべきか
- 夫婦別姓への賛否とその理由
- 教育の場でどこからが体罰となるか
事前にテーマが分かっている場合はもちろん勉強をしておきましょう。
分かっていない場合でも、最近話題になっていることや、その自治体の問題となっている点は下調べして、ある程度は知識を得ておきましょう。
採点のポイント、評価基準
さて、それでは一番気になるところ、面接官が何をポイントに見ているかということについてお答えしましょう。
いくつかポイントがあるので列挙していきます。
①協調性、社会性
まずは、なぜ集団討論をするかと言えば、この点を見たいからですよね。
公務員だけではありませんが、企業でいわゆるサラリーマンとして働くということは、組織の中で働くということです。
組織で働くには協調性が必要。
協調性があるということは、人間としての社会性があるということです。
たまに人と違うことが素敵、個性が重要という考え方の人もいますが、それは社会性があることが前提のお話です。
特に公務員はまだまだ保守的な組織。
協調性を見せないことが、個性があってすばらしいことであると勘違いしないようにしましょう。
もちろん、なんでも人に合わせる、自分の芯を持たない人になればいいというわけではないのが難しいところですけど。
相手の意見と自分の意見を理解し、どうすれば目的を達成できるか意見を調整していく・・・そんな実際の仕事の場でも重要となるスキルが試されます。
私の体験談のひとつですが、面接で人事委員がかなり個性ある尖った人を高評価にしましたが、我々のような普通の面接官は低評価にして、内部で意見が分かれたことがありました。
結果としては、高評価にしたのはそのひとりの人事委員の方だけで、他の人たちはみんな低評価ということで落としました。
余談ですが、高評価の方はけっこうお偉いさんの方なので、落とす評価をしたことをその方に説明するのが大変でしたね。
②積極性、リーダーシップ
これも集団討論で良く分かる特性ですね。
積極性のある方は、やはり口火を切って話をすることが多いです。
人の邪魔をしてまで発言するのは積極性とは言えませんが、積極的に自分の意見を伝えることは良いことです。
みんな黙っていたら議論になりませんからね。
そして、リーダーシップ。
集団討論でリーダーシップを発揮してやろう、と思っても正直なかなか難しいものです。
リーダーシップのある方は集団討論で自然と中心となっていることが多いです。
リーダーシップはある種、天性のところもあるので、せめて積極性は見せましょう。
これは面接官にはすぐ見抜かれますし、ほかの受験生も感じ取ります。
無理してるなあ、といった目で見ていますが、けっして低評価ではありません。
無理してるけど、なかなかがんばっているなという温かい目で見ています。
討論、ディスカッションをまとめられないのにリーダーになろうとするのは無理がありますが、
なんとかごまかせそうならがんばってみるのもいいでしょう。
③論理的思考力
そして、論理的思考力。
これも一般の会社でも同じですが、人に納得してもらうには、論理的に話さないといけません。
特に公務員は上司や議会≒市民・県民に説明するのに、論理が破綻していたら誰も理解してくれません。
自分の”思い”だけでは、ひとりの仕事はできても、周りを巻き込むことはできませんよね。
いわゆる、筋が通った話ができるかということになります。
自分の親はわがまま言っても言うことを聞いてくれるかもしれませんが、
社会人なら「Aという背景の中で、Bという事象が発生したから、Cという対策をとるべきだ」という筋道、流れをもって人に訴える必要があります。
上記では簡単に三段論法みたいに言いましたが、実際はビジネスの場でもよく使われる言葉「エビデンス(=証拠、「根拠)」も必要ですよ。
客観的なデータをもとに、説得力をもって、論理的に話せる人は高評価です。
④基礎知識
③のところで、エビデンスの話をしましたが、そのエビデンスを示すには基礎知識が必要です。
集団討論、グループディスカッションでは社会問題がテーマとなることが多いので、普段からアンテナを張っておくと良いですね。
一番良いのは地元の新聞を読むことです。
しかし、遠方に住んでいたり、そもそもいまどき新聞なんて読まないという方は、「速攻の時事」でも読んで、自治体のホームページで施策を調べるくらいはしておきましょう。
受験する市の目玉政策も知らずに、関係するテーマを語っても恥をかきますから。
それに、豊富な基礎的知識を有していればいろいろな観点から物事を語れます。
集団討論、グループディスカッションの基礎、コツ
さて、そんな集団討論ですが、基本的にはどう立ち回ったら良いでしょうか。
そのコツのようなものを伝授します。
といっても、先ほどの採点基準を意識した行動を心がければ大きく破綻しないかと思います。
基礎、コツその①:事前の情報収集
これは、事前にテーマが示されていようがいまいが、必須です。
事前にテーマや課題が示されているなら、やることは明確ですね。
そのテーマ等についての社会情勢を新聞やニュースによる下調べをしておき、県や市の関連施策を調べておきましょう。
他県や他の市町村の関連施策も調べておくとさらに良いです。
事前にテーマや課題が示されていない場合もやれることはあります。
まずは過去例を探しましょう。
TACやLECや大原等の大手資格学校、公務員予備校であれば、過去の生徒の情報をデータベース化しているはずです。
そこで、自分が受験する自治体が、過去にどのような出題をしていたか調べておきましょう。
最近は、自治体によってはインターネットで過去の出題内容を公表しているところもあるので、もちろんそれもチェック。
あとは、大学等の就職課に聞いてみるとか、OBの人を紹介してもらい聞いてみるとか、やれることはやっておきましょう。
過去例を見れば、その自治体の出題傾向が分かるはずです。
これをもとにやることは同じ、社会情勢の下調べと、自治体の施策の調査です。
全く情報がなければ、とにかく最近社会の関心ごとが高いことを頭に入れておき、自治体の総合計画で柱となっている施策についてでも調べておきましょう。
基礎、コツその②:周りの意見を聞いて解釈したうえで発言する
これも当たり前と言えば当たり前ですが、意外と集団討論の中で守れていない人が見受けられます。
なぜ面接とは別に集団討論、グループディスカッションという複数人のコミュニケーションが必要な試験を実施しているかを考えれば、この基礎、コツが必要なのかは分かりますよね。
自分の意見があらゆる方向から見て正しいと言える全知全能の神であれば別ですが、みんなの頭脳を借りてこそ良い意見が生まれるものです。
周りの発言は、許されるならメモなどをしっかりとり、その意味を考えた上で自分の意見を発信しましょう。
分かってはいても、けっこう議論が白熱してくると、どうしても自分の主張をしたくなるものです。
自分の主張はいいんですが、流れを読まずにただ主張しても、誰も聞く耳を持ってくれません。
他の人の意見を踏まえた発言が、集団の中でコミュニケーションがとれているということなのです。
基礎、コツその③:流れに乗りつつ、脱線しそうになったら修正を図る
さて、これも集団討論が白熱していく中でありがちです。
与えられたテーマのもと、一定の結論を求めてディスカッションを進めていく中で、いつの間にか話が脱線してしまうことがあります。
議論の流れに乗ることは推奨していますが、その流れがずれていったときがあなたの腕の見せ所。
議論の目的を達成するために、流れを戻してあげましょう。
ただし、「話の方向性が違ってます。」なんていきなり言い出したら空気の読めないやつです。
そこは、前段での議論を踏まえつつ、さりげなく話題を結論に近づけていきましょう。
基礎、コツその④:尖った鋭い意見を言おうとがんばらない
これは、集団討論に慣れていない、というかコミュニケーションに慣れていない方にありがちです。
集団討論の「採点のポイント、評価基準」の項目を見ていただければ分かるかと思いますが、”すごい意見を言う”ということは特に重視されていません。
それなのに、人とは違って自分は頭がいいんだということを主張したくなり、ちょっと斜に構えた意見やとんでもないビッグプロジェクトをぶち上げる方も多くいらっしゃいます。
みんながあまり考えていない視点での意見や俯瞰的に物事を見られているような意見は「おっ」と思いますが、とにかく鋭くて尖った意見を言おうとがんばっている人は、ちょっと集団討論というものををはき違えているなという感じです。
2ちゃんねる(5ちゃんねる)よろしく、「はい、論破」となっても、けっして良い評価にはつながりません。
あくまで、あなたの社会性やコミュニケーションを見たいということを忘れないようにしてください。
役割分担について
さて、集団討論、グループディスカッションというと、就職本のようなものには、役割分担について書かれていることがあるかと思います。
やれリーダーに立候補しろだの、リーダーの役割が苦手ならタイムキーパーをしろだの
マニュアルのようなことが載っています。
もちろん、討論の最初にグループ内の役割分担について話すことは良いかもしれません。
リーダーがいれば意見の集約がしやすいですし、タイムキーパーがいれば時間オーバーで結論が出せないという悲劇を回避できる可能性が高くなるでしょう。
しかし、正直採点する立場からすれば、役割分担で決めた役なんて特に加点要素にはなりません。
リーダーに立候補すれば、やる気だけは認めますが、実際に議論をうまくまとめられそうになければ、がっかり度も大きいものです。
結局、立候補しなかったけど本当にリーダーシップのある人が、いつの間にやら実質的にリーダーになっているパターンを多く見かけます。
それに、タイムキーパーとか書記なんて、評価としては特に意味はありません。
(集団討論をスムーズすすめるという点においてはもちろん意味がありますが)
だって、タイムキーパーや書記なんて、誰でも出来ます。
時計見たり、発言をメモしているだけですよね?
自分がタイムキーパーをやることになったとしても、タイムキーパーを全うすることが評価にはならないことは肝に銘じておきましょう。
そんな役割に必死になるより、ちゃんと議論に参加しましょう。
高評価となるかは正直、運もある
さんざん採点の基準やコツについて語っておきながら、「そりゃないよ」と思った方、申し訳ございません。
しかし、集団討論のメンバーが筆記試験の合格者からランダムに集められている以上、メンバーによってグループの評価が左右されるというのも致し方のないところ。
議論をぶち壊す「クラッシャー※」に当たってしまったら運の尽き。
いくらがんばっても話にならないこともあります。
そういった場合は、できるだけ建設的な話し合いになるように努力する姿勢だけは見せておきましょう。
幸い、集団討論が合否の決め手となる(=配点が非常に高い)ような自治体は少ないかと思います。
万が一、集団討論でうまくいかなかったとしても、くよくよせずに切り替えて面接に臨んでください。
※自分の意見ばかり主張したり、他人に反論ばかりして、議論の進行を著しく妨げる人
まとめ
- 集団討論では「周りの意見を踏まえた上での発言をする」ということを忘れないように。
- 討論内容の結果自体にはそれほど意味はない、議論の過程でどのように関わっていけるかが重要
- あまりうまくいかなかなくても、切り替えて面接で立て直そう。
それと、何度も言いますが、すごい意見を言うことより、議論を上手に形成していくことが重要ですよ。