こんにちは、元地方公務員で人事・採用を担当していた”ともきち”です。
人事担当の目線から、公務員試験、公務員の人事等について役立つ情報をお届けします。
これから公務員になろうと考えているみなさん。
公務員といってもいろいろ種類があるのはご存知ですよね。
裁判所事務官とか国税専門官といった専門職なら、なんとなく何をするかは分かるかもしれません。
しかし、いわゆる行政事務職の国家公務員と地方公務員というと、働く場所以外でどのように違うかはよく分からないかと思います。
今回は、国家公務員と地方公務員、どちらを目指すか迷っている方にどのような違いがあるか、メリットやデメリット等についてお話しします。
ぜひ自分の大切な進路を決める際の参考にしていただければ幸いです。
◆目次
地方公務員のメリット
まずは、私の出身でもあり、一番知っている地方公務員から。
国家公務員と比較した場合の地方公務員のメリットは以下の通りです。
こんなところでしょうか。
それではさっそく一つずつ解説したいと思います。
①地元で働くことができ、それなりに良い就職先
まず、一番のメリットと言えばこれでしょう。
地元(または好きな地方)で働くことができます。
しかも、市役所レベルであれば転居を伴う転勤はほとんどなし。
今の時代、良い(と言われる)仕事は東京にどんどん集中しています。
良いというのは、給与等の待遇面やステータス、やりがい等。
田舎であればあるほど、驚くほど給料も低く、劣悪な環境の仕事も多くなるものです。
しかし、役所の職員と言うのは、地方でも一定のステータスがある、珍しく安定した就職先。
(ただし、給与は世間のイメージよりずいぶん低いです。)
地元で秀才で育ってきて、大学で首都圏に出て、就職先として地元に戻ってくるとなると、まともな就職先は公務員か金融機関くらいしかないという地方も多くあります。
さらに、金融機関は比較的体育会系で、ノルマ等厳しいイメージがある一方、公務員はそこまでではありません。
本当は民間企業のほうが活力があるのが資本主義国家のあるべき姿なのですが、皮肉にも地方公務員のほうが人気の就職先になってしまっています。
地元が好きなら、地方銀行、マスコミ等もありますが、やはり地方公務員は魅力的でしょう。
②公務員としていろいろな仕事をすることができる
この②は、私としてはけっこうメリットかと考えています。
国家公務員は○○省といった専門の部署に就職することになります。
厚生労働省とか経済産業省とか財務省とかですね。
基本的にはその省庁に関する仕事を一生の仕事とするわけです。
しかし地方公務員は、厚生労働省的な仕事もすれば、経済産業省的な仕事も、財務省的な仕事もします。
国の専売特許と思われる外務省ですら、それっぽい機能が役所にあるところもあります。
地方公務員の場合、万が一配属された先の水が合わなくても、異動で全く違う部署に行けます。
数年間我慢しましょう。
一方、国家公務員で、そもそも○○省の仕事にあまり興味を持てなかった・・・となると辛いところです。
地方公務員の場合、公務員としていろいろな部署、仕事を経験する中で本当に自分のやりがいがあることを見つけることができる可能性が高まります。
③小さめの市役所や町役場であるほど比較的楽
これは、自治体によって差はあることはりますが、小さめの市役所や町役場は比較的仕事に余裕があり、楽です。
多少私の偏見も混じっているかと思いますが、大変さで言えば以下のような感じです。
国家公務員>都道府県庁職員>政令指定都市職員>中核市職員>その他役所職員
ちなみに、これは本省や本庁の勤務を想定しており、出先だと2段階くらい楽になります。
やはり大きい組織であればあるほど、組織としてのガバナンスは強化されている傾向にあります。
仕事を進めるにはしっかりとした理屈が必要で、中途半端な内容だと仕事が進められません。
小さめの役所だと、(一概に悪いとは言えませんが)組織が未成熟で、緩い傾向にあります。
やれる範囲で無理なくやっている、もしくは何かやるにしても、そこまで詳しい説明を求められないという感じです。
④体験談:時間外勤務手当(残業代)が全てつく
まず、私が国に出向していた時の体験談からお話しします。
私は某省庁の本省、いわゆる霞が関に出向していたのですが、その省庁の方は残業を記録としてつけてはいましたが、予算によって自動的に削られるという話でした。
例えば、80時間残業したとしても、いつの間にか調整されて45時間とされているような感じです。
一方、私が勤めていた自治体は、基本的に時間外勤務手当は全額出ました。
当たり前と言えば当たり前ですが、残業した分は残業代がもらえるということです。
国の場合は残業代が全くつかないという訳ではないのですが、一部サービス残業になってしまうことになります。
もちろん、働き方改革が叫ばれる中で、今は時間外勤務手当を満額貰えるようになったかもしれません。
また、自治体でも国と同じように決められた予算以上には出せず、○○時間以上の残業はサービス残業としているところも多いという話も聞きます。
こればっかりは、OB訪問などで実態を聞き出すしかないですよね。
一応、私の体験談と言うことで、私のいた自治体は時間外勤務手当が満額もらえる一方、国家公務員の方は満額出ていないようでした。
国家公務員のメリット
次に、私も出向していた時に一緒に働いたこともある国家公務員。
地方公務員と比較した場合の国家公務員のメリットは以下の通りです。
こっちもこんなところですかね。
こちらも詳しく書いていきたいと思います。
①仕事のスケールが大きい
まずはやはりこれでしょう。
特に本省だと仕事のスケール感に驚きます。
地方公務員でもスケールの大きい仕事はありますが、やはり国の仕事には敵いません。
私も国に出向している時は全国を飛び回っていました。
朝、羽田から福岡へ飛行機で行って、仕事を済ませて東京の職場に戻ってくるなんてこともありました。
それに外国との話もあり、とある分野への韓国政府への対応方針など、スケールの大きな話に「すごいな」と感じていました。
また、予算規模も数十億円単位のものも多く、地方では一大ビッグプロジェクトとされているような規模でも、ある種日常の話でした。
さらに、国会議員や会議の委員など、全国的にも知名度の高い方とのやりとりもよくあります。
全国、全世界を相手にし、大きな予算を動かし、影響力の大きな仕事がしたいということであれば、国の本省の仕事はおすすめです。
もちろん責任も大きいので大変ですけどね。
②同級生や近所の人からすごいと思われる
これは実際の公務員のレベル感を知っている人からしたら、ちょっと意外かもしれません。
国家公務員総合職のキャリア官僚ならいざ知らず、一般職の普通の国家公務員でもけっこうもてはやされます。
公務員を受験する皆さんなら、国家公務員一般職は地方国立大やマーチクラスが主力の、現実的な就職先と言うことはご存知でしょう。
しかし、特におじいちゃんおばあちゃん世代からは絶大な信頼を得ているのもまた事実。
特に田舎で、息子や孫や、近所の子が国家公務員になったと知ったら、「すごい」と思われること請け合いです。
別に、すごいと思われたくて国家公務員になる訳ではないと思いますが、人に堂々と言える就職先であることは間違いないでしょう。
③ある程度自分のやりたいことができる
これは、地方公務員のところでお伝えした「いろいろな仕事をすることができる」とは逆のパターンです。
国家公務員がいろいろな仕事ができないという訳ではありません。
しかし、やはり○○省という、ある程度方向性の決まった場所で働くわけですから、自分が志したことと同じ方向性の仕事ができる可能性が高いです。
地方公務員ですと、自分がいくら産業振興の仕事をしたいと考えていても、一度も配属されることなく公務員人生を終了する可能性もあります。
もし、一生の仕事にしたいと思える方向性があれば、国家公務員のほうが向いているかもしれません。
④地方公務員に対して指導的役割となれる
国と地方は対等です。
というのは前提、基本原則としてあります。
しかし、やはり実際、国と地方が対等と言うのは建前。
実際はやはり上下関係のようなものはあります。
国の政策に地方が従わない場合、地方交付税交付金の不交付などの仕返しを受ける場合もあります。
もし、あなたが人を動かす権力が欲しいと心の中で思っていれば、国家公務員のほうがよさそうです。
ただ、地方自治の名のもとに言うことを聞かない自治体もたくさんあるので、そことの調整は苦労しそうですが。
ただ、最近はこの傾向はどんどん弱まっているかと思います。
昔は、霞が関の廊下は、陳情に来た地方からのお土産品であふれていたという話も聞きますが、私が出向したときはずいぶんキレイな廊下でした・・・。
⑤本省なら一般の方の苦情を受けるのが少なめ
これは、デメリットとも言えますが、国家公務員と国民・県民・市民との距離感は遠いです。
私は地方自治体の人事の部署にいたときは特に一般の方の苦情を受けまくっていました。
この職員の態度が悪いからクビにしろという電話だの、直接職場乗り込んできて無茶な要望を喚き散らされるなど日常茶飯事でした。
当たり前ですが、自治体は市民県民の生活に密着しているため、庁舎には一部を除いて自由に出入りすることができます。
しかし、国家公務員の本省や、地方の合同庁舎などは入場のハードルが高いです。
気軽に入ることはできず、自分の氏名や所属、訪問先や目的を明らかにして入場手続きを行ってゲートを通らなければなりません。
よって、それを突破してまで職場に怒鳴り込んでくる人はあまりいないそうです。
また、特に本省は政策の企画等が主な仕事で、実行部隊は出先の局であったり、自治体であったりするので、直接苦情を受けることは少なめです。
もしあなたが、そういった対応がどうしても嫌なら、その視点からも考える価値はあるかもしれません。
そんなにこだわりのない方へのおすすめは地方公務員
さて、両者ともいくつかメリットを挙げてきましたが、いかがでしょうか。
いずれかの項目にあなたがメリットを感じ、共感する点があれば、そちらの道に進むのも良いでしょう。
ただ、あまりこだわりなく公務員になりたいと思っている方には、私は地方公務員を勧めます。
やはり、いろいろな仕事ができるというのは、大きなメリットかと思います。
正直、公務員になろうと考えたときに、これをどうしてもやりたいと深く考えられる人は多くはないでしょう。
また、実際に仕事をしてみないと、本当に自分のやりたいことが間違っていなかったか、ということは分かりません。
もちろん、確固たる意志があったり、現場適応力が高かったりする場合は、国家公務員でも全く問題ありません。
一方、いろいろな公務員としての仕事をする中で、自分の適性を見つけていきたいという方は多いかと思います。
そうしたとき、国家公務員でも修正が効かないことはないのですが、地方公務員のほうがいろいろな道は拓きやすいです。
結局は、自分の好みになってしまいますが、40年以上働くかもしれない職場、よく考えて決めましょう。
まとめ
- 国家公務員にも地方公務員にも、どちらにもメリットがある
- 一生をささげたい分野があれば国家公務員がおすすめ
- いろいろと経験したいなら地方公務員がおすすめ