こんにちは、元地方公務員で人事・採用を担当していた”ともきち”です。
人事担当の目線から、公務員試験、公務員の人事等について役立つ情報をお届けします。
公務員試験に合格し、4月から採用されるみなさん、おめでとうございます。
でも、働き始めているのにまだ正職員にはなっていないって知ってました?
働き始めて半年も経っていない場合、実はあなたは条件付採用期間中なのです。
◆目次
条件付採用は法律(地方公務員法)に定められている
条件付採用(じょうけんつきさいよう)・・・あまり聞きなれない言葉かもしれませんし、もしかしたら合格者説明会、新人職員研修で丁寧な説明があったかもしれません。
「条件付採用」とは、民間で言う「試用期間」のこと。
民間で正社員として働いたことがなくても、アルバイトでも試用期間ってありますよね。
そんな試用期間である、公務員の条件付採用。
これは、アルバイトみたいな試用期間ではなく、地方公務員法で定められている、れっきとした制度なのです。
根拠法令は以下の通り。
地方公務員法(抜粋)
第二十二条 臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、職員の採用は、全て条件付のものとし、その職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。この場合において、人事委員会等は、条件付採用の期間を一年に至るまで延長することができる。
上記の通り、条件付採用は地方公務員法第22条第1項にて定められています。
ちなみに、ちょっと前(平成23年くらい?)まで、こざとへんのつくの「条件附採用」という名称でしたが、現在は「条件付採用」に改められています。
意味は同じですけどね。
この法律、条文の趣旨は、試験だけでは判断できない職務能力を、実証により判定し、職務遂行能力がない職員は去ってもらうということです。
かいつまんで言えば、こんな感じです。
この条文の通り”六月を勤務”つまり6か月間、”職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になる”のです。
それまでは仮採用。
この間、公務員の手厚い身分保障はありません。
行政不服審査法に基づく不利益処分に関する不服申立ての規定は適用されません。
以下がその根拠条文です。
地方公務員法(抜粋)(適用除外)第二十九条の二 次に掲げる職員及びこれに対する処分については、第二十七条第二項、第二十八条第一項から第三項まで、第四十九条第一項及び第二項並びに行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定を適用しない。一 条件付採用期間中の職員
正規職員と違って、免職=クビの処分を受けても、文句は言えないのです。
(裁判を起こすということはできますが)
どんなことをしたら免職になる?交通事故でクビって本当?
さて、地方公務員法で「その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。」とされていますが、
具体的にはどのような場合に正式採用になって、どのような場合に免職となってしまうのでしょうか。
正式採用になる場合
まず、正式採用となる場合ですが、「普通」に仕事をしていれば、正式採用になります。
特別な成果を出さなくても、とりあえず言われたことをがんばれば、あっという間に半年が経ち、正式採用となっています。
ということなんですが、本当に特別なことは必要ありません。
多少仕事ができなくったって、これから改善していけばいいのです。
失敗したってなんのその。
失敗に目をつむってもらえるのは新人の特権です。
とりあえず、仕事を頑張って正式採用の時を待ちましょう。
交通事故を起こしたらクビって本当?
さて、問題となるのは正式採用されずに不採用、つまり免職となってしまう場合です。
私が新人の頃は、よくこんなことが言われていました。
「(特に公用車で)交通事故を起こしたらクビになる。」
これは、私が退職するときも言われ続けていました。
この話は代々受け継がれているのですね。
このような話から、新規採用職員には公用車を運転させないというところも多いそうです。
別に運転が禁止されてるわけではないのですが、配慮というやつですね。
で、実際のところどうなのか、という話をすると
交通事故を起こしたことが原因で、正式採用されないということはまずありません。
私用でも、公務中でも、です。
だから、仮に交通事故を起こしてしまっても、職場には正直に伝えましょう。
(もちろんこの報告も、私用でも、公務中でも、です。)
むしろ交通事故を起こしたことをだまっていて、後からバレたほうがやばいです。
その場合は、本当に免職の可能性もあります。
ただし、交通事故で人を死傷させてしまった場合は別です。
これは、条件付採用だけではなく、すべての公務員に当てはまることですが、
禁錮刑以上の刑事罰を受けた場合は自動的に失職します。
これも、地方公務員法に定められています。
地方公務員法(抜粋)(欠格条項)第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(降任、免職、休職等)第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。4 職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。
(条例で例外規定を設けていれば救われる可能性はありますが)
自動車運転過失致死傷罪の場合、禁錮刑に課される可能性がありますので、当然ですが十分注意して運転してくださいね。
免職となるケースとは
こればかりは、各自治体の裁量が強いので、一概には言えませんが、
「職務遂行能力が著しく低い」と判断された場合は免職の可能性があります。
- 上司の命令に一切従わない
- 同じミスを何度も繰り返し、改善しようともしない
ポイントは、「一切従わない」、「改善しようともしない」といった点です。
今後指導を続けても使い物にならないという判断になれば、免職という結果になります。
実際に条件付採用から正式採用されずに免職されることは?
では、実際に正式採用されずに免職されることはよくあるのでしょうか。
正式採用か無職になるか、不安定な身分のまま震えて半年間勤務しなければいけないのでしょうか。
答えは「No」です。
条件付採用といえども、公務員試験を突破して職員に採用されたわけです。
実際、そう簡単に免職と判定されるものではありません。
正式採用率は99%と言ってもいいのではないかというくらいです。
いくら条件付採用期間中の職員が行政不服審査法の適用除外だからといえ、免職とした場合は、それを不服として裁判を起こされる可能性もあります。
免職となれば、裁判を見越して客観的な証拠集めをしなければならないなど、自治体からしたらそれなりにハードルが高いのです。
私がいた自治体で、勤務成績不良によって、条件付採用期間中に免職となった事例は、平成一桁台にまでさかのぼります。
(それ以外で、犯罪を犯して免職となった人もいましたが・・・これは論外ですね。)
ですから、そうやすやすと免職になることはありません。
一生懸命仕事をすれば、ミスをしようが正式採用にたどり着きます。
まとめ
- 公務員は条件付採用からスタート
- 6か月の勤務を経て正式採用に
- 条件付採用期間中に交通事故を起こしたらすぐ免職ということはない
- 免職となるのは非常にレアケース